潜在ニーズとは?引き出し方やポイントを解説

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ビジネスにおいて潜在ニーズを把握することは必要不可欠といえます。

マーケティングにおいて、ニーズには「潜在ニーズ」と「顕在ニーズ」の2種類が存在しますが、この記事では、潜在ニーズに注目して解説します。

マーケティングや営業は、顧客のニーズ(需要)を理解することから始めますが、潜在ニーズが何かを正しく理解できていますか?

マーケティング活動や営業で活用することを目的に、潜在ニーズと顕在ニーズそれぞれの意味と潜在ニーズの引き出し方やポイントを紹介します。最後に潜在ニーズを引き出した具体例も掲載していますのでぜひご覧ください。

潜在ニーズ・顕在ニーズとは?

ニーズとは「~したい」という欲求のことで、マーケティングにおける「需要」です。まずは潜在ニーズと顕在ニーズについて、それぞれ解説します。

潜在ニーズとは

潜在ニーズは、顕在ニーズと異なり顧客自身が求めているモノ・コト(商品やサービスなど)が何かを明確化していないにもかかわらず、何かしらの欲求がある状態をいいます。

この状態は何を求めているのか本人もわかっていないため、購買に至ることはありません。顧客に購買行動を起こさせるためにはニーズを顕在化させる必要があります。

顧客ニーズは畑の大根で例えるとわかりやすく、地面に埋まっている大根部分が潜在ニーズとなります。地面の中にあり、求めているものが明確に可視化できていない状態です。

潜在ニーズは顕在ニーズよりも割合として大きいですが、普段顧客自身が意識することはないので、自身が求めているものが何なのかを理解することは難しいです。

生活の中での偶然の気づき、企業や店舗などが行うSNSなどのキャンペーン、展示会のイベントのようなさまざまなマーケティング活動などから、顧客の潜在ニーズが顕在化することがあります。

顕在ニーズとは

顕在ニーズとは、ターゲットとなる顧客が自身の欲しいモノ・コト(商品やサービスなど)が何かを自覚している状態をいいます。この状態になれば、自分が欲しいモノ・コトが何なのか、なぜ欲しいのかを説明できます。

潜在ニーズは、大根の地面に埋まっている部分だとお伝えしましたが、地面から出ている大根の葉っぱ部分が顕在ニーズとなります。

地面から外に出ており、求めているものが明確に可視化できている状態です。この状態の顧客は、自身の需要が何かを理解しているので、ニーズを満たすために購買行動を起こす可能性が高いです。自分の欲求を満たすための解決手段を意識して探し、見つかったモノ・コトの費用対効果がよければ購買に至ります。

ニーズとウォンツの違い

顧客ニーズを考える時に「ニーズ」と「ウォンツ」の違いについても知っておくとよいでしょう。

ニーズは、人の欲求が満たされていない欠乏状態をいいます。例えるなら「のどが渇いているので飲み物が欲しい」時の「のどが渇いている」がニーズとなります。

一方、ウォンツはニーズを満たすための具体的な要望なので、「のどが渇いているので飲み物が欲しい」時の「飲み物が欲しい」がウォンツとなります。

ニーズは目的であり、ウォンツは手段

「のどが渇いているので飲み物が欲しい」の例で、簡単にニーズとウォンツの違いを説明しました。このニーズとウォンツの関係は一対一に限ったものではなく、一対複数や複数回連鎖することもあります。

従って、ニーズは「目的」でウォンツは「手段」と考えると、整理するのが簡単になります。ニーズ(目的)は手段(ウォンツ)によって実現したいことであり、ウォンツ(手段)は目的(ニーズ)を実現するための、モノ・コトと覚えましょう。

潜在ニーズを引き出す理由は?商談が有利になる?

潜在ニーズを引き出すことで商談が有利に進みます。その理由は次のとおりです。

顧客はニーズよりウォンツを話すことが多い

前述のとおり、ニーズは目的でウォンツは手段だとお伝えしましたが、目的であるニーズは抽象的な概念であり、手段であるウォンツは具体的です。具体的なものは頭に浮かべやすいこともあり、ヒアリングすると顧客はニーズよりウォンツのほうを話すことが多くなりがちです。それを理解したうえで、潜在ニーズを引き出す努力が必要といえます。

潜在ニーズを引き出した営業から顧客が購入する

ニーズが顕在化している状態であれば、顧客は課題解決に必要なモノ・コト、サービスを自身で探します。探す段階でこだわりなど特別な条件が存在しない場合は、幅広く情報を集め、いくつかの企業を比較して費用対効果が高いものを選択します。

しかし、顧客が自身のニーズを理解していない、意識していない潜在的なものである場合は、購買行動を取る可能性は低いです。その際に、営業は顧客の潜在ニーズを引き出すサポートをすることで、顧客が購入に至る可能性を高めることができます。

ニーズの顕在化ができる営業は競合が増えたとしても、顧客理解度を高め、本質的な解決策まで提案できれば競合優位性が得られます。

商談受注率が高まる

潜在ニーズを引き出すことができれば商談受注率が高まります。

顧客自身が気づいていなかった課題や気づいていても解決する方法がわからない潜在ニーズを、顕在化することができる営業がいれば、顧客が困ったときに最初に相談されるでしょう。

しかし、顕在化したニーズに対して顧客が指定するモノ・コト、サービスを渡すだけでは下請け業者と見なされるので注意が必要です。

課題解決型の営業は、顧客と対等なパートナーの関係性で成り立ちます。同じ目的を共有して一緒に課題解決します。

潜在ニーズを引き出す方法

潜在ニーズを引き出すためには、顧客が理解している顕在ニーズやウォンツから深掘りすることが大切です。そのために「なぜ?」というシンプルな質問を何度も繰り返して本質的な潜在ニーズを引き出します。

ニーズは目的であり、ウォンツは手段です。顧客からニーズを引き出す際には、相手の発言をウォンツと考えて「なぜなのか」「目的は何か」を質問しましょう。

一度の質問でニーズが明確化することがない場合は、回答(ニーズ)に対してさらに質問を繰り返して掘り下げることで、潜在ニーズを引き出すことができます。

よくある手段としてはインタビューやエスノグラフィーといったマーケティングリサーチが用いられます。

潜在ニーズを引き出す具体的な手段 ①:インタビュー

顧客に直接質問する手段がインタビューとなります。顧客のウォンツをヒントに、なぜそのウォンツが生まれたのかを繰り返し質問することで、顧客本人が普段意識していなかったことに気づくことがあります。

インタビューは一対一で行われるデプスインタビューと、複数人で行うグループインタビューがあります。インタビューをする際にはラダリング法と呼ばれる深層心理を明らかにする対話方法が用いられます。

潜在ニーズを引き出す具体的な手段 ②:エスノグラフィー

エスノグラフィーとは、顧客の自宅やオフィスに出向き、普段生活する空間に調査員が身を置いて行動観察することです。

モノ・コト、サービスの利用状況を確認するための定性調査の一つであり、対象の行動・環境・コミュニティから価値観や意識を明らかにすることを目的に行われる手段で、潜在ニーズを探る方法としても適しているといえます。

潜在ニーズを引き出すための質問例

顧客にインタビューする際に潜在ニーズを引き出すために、どんな質問をすればいいのかわからない方のために具体的な質問例をまとめました。ウォンツをヒントにオープンクエスチョンを使用して背景を探ることがポイントとなります。

ウォンツを選んだ理由を聞く

例えば、ウォンツ「青汁を飲みたい」は、「健康になりたい」というニーズから生まれた一つの手段です。なぜ、青汁を飲みたいのか顧客に質問すれば、健康になりたいからと返答されるでしょう。

この答えに対して、さらに質問として「健康になるための商品は青汁のほかにもあると思いますが、なぜ青汁を選んだのでしょう?」と尋ねると「青汁なら粉末を水に溶かして5分もかからずに飲むことができる」などと答えが返ってきたとします。

結果として「健康になりたいけど時間をかけたくない」といった、青汁を飲むという決断に至った理由(潜在ニーズ)を引き出すことができます。

ウォンツを選択したメリットを聞く

ウォンツの向こう側に何があるのか、ウォンツを手に入れた先にどのようなすてきな世界が広がるのかを確認することで、顧客が真に目指している状態(ニーズ)を確認することができます。

「青汁を飲んで健康になる」の先に顧客が考えていた未来が「犬と公園を走り回りたい」だとします。実は「青汁を飲む」というウォンツ以外の手段でもよいと気づくことがあるかもしれません。

その結果、異なるウォンツも選択肢に加えられ、より多くの潜在ニーズを引き出すきっかけとなる場合もあります。

潜在ニーズを引き出すためのポイント

潜在ニーズを引き出す際に大切なポイントは次のとおりです。

いくつものパターンの質問を用意する

ウォンツを深掘りするためには何度も質問を繰り返すことが大事です。同じような質問ばかりだとインタビュー相手に不信感を持たれてしまう恐れがあるので、質問にはバリエーションを持たせることがポイントとなります。

会話の中で潜在ニーズを引き出すので、以下のような質問パターンを覚えておくとよいでしょう。

  • ○○をすることでどんなメリットがありますか?
  • もし、○○をすればどうなりますか?
  • ○○がよいと感じる理由を教えてもらえますか?
  • ○○をする目的は何ですか?

質問相手の言葉をそのまま受け取らない

顧客に質問することでいくつもの答えが見つかりますが、その答えをそのまま受け取る(うのみにする)と潜在ニーズを引き出すことはできません。

インターネットで求人サイトを検索する人の潜在ニーズは何か考えてみましょう。顕在ニーズとしては「転職したい」となり、さらに深掘りすると「給料アップ、キャリアアップ」などが考えられます。もし、自身が転職エージェントとして、このような顧客のサポートを行う場合、顕在ニーズしかわからない場合は「今より給料が高く、キャリアアップとなる仕事」を紹介することしかできません。

もし、顧客満足度を高めたいのであれば、潜在ニーズを引き出す必要があります。

なぜ、「転職エージェントを頼ったのか」を考えると「在職中で転職先を探す時間がない」や「1人で転職するのが心細いから誰かに相談したい」という顧客の思いが見えてきます。

質問相手の言葉(ウォンツ)だけ受け止めてしまうと深掘りできずに、潜在ニーズが引き出せないことが多いです。なぜそれ(ウォンツ)を求めたのかを相手の立場になって考えることが大切です。

潜在ニーズを引き出した具体例を紹介

潜在ニーズを引き出した具体例を紹介します。

具体例①「ランニングマシンが欲しい」

  1. 「ランニングマシンが欲しい」←「なぜ?」
  2. 「足を細くしたい」←「なぜ?」
  3. 「きれいに見られたい」←「なぜ?」
  4. 「周りからモテたい」← 潜在ニーズ

潜在ニーズを満たす手段(ウォンツ例)

  • ダイエット食品
  • 化粧品
  • 合コンのセッティング

上記から、潜在ニーズを満たすための手段がランニングマシンのほかにも考えられることがわかりました。

具体例②「任天堂Switchが欲しい」

  1. 「任天堂Switchが欲しい」←「なぜ?」
  2. 「現実逃避するくらいゲームに没頭したい」←「なぜ?」
  3. 「仕事のストレスを解消したい」← 潜在ニーズ

潜在ニーズを満たす手段(ウォンツ例)

  • カラオケ
  • 体を動かす
  • おいしい食事を取る

具体例③「車が欲しい」

  1. 「車が欲しい」←「なぜ?」
  2. 「早朝に家を出て電車で通勤したくない」←「なぜ?」
  3. 「起きる時間を遅くしたい」←「なぜ?」
  4. 「寝る時間を増やしたい、質のよい睡眠を取りたい」← 潜在ニーズ

潜在ニーズを満たす手段(ウォンツ例)

  • 睡眠薬
  • 快眠グッズ(ベッド・枕)
  • 夜遅くまでスマホを触る習慣の見直し

具体例④「業務の効率化をしたい」

  1. 「業務の効率化をしたい」←「なぜ?」
  2. 「業務に関わる社員を減らしたい」←「なぜ?」
  3. 「業務に関わる社員には営業に力を入れてもらいたい」←「なぜ?」
  4. 「営業人数を増やして営業力を強化したい」← 潜在ニーズ

潜在ニーズを満たす手段(ウォンツ例)

  • 社員教育
  • 営業サポートツール
  • Webサイトの強化

具体例⑤「業務マニュアルを改訂したい」

  1. 「業務マニュアルを改訂したい」←「なぜ?」
  2. 「業務に関わる社員を減らしたい」←「なぜ?」
  3. 「全社目標の業務効率化を実現したい」← 潜在ニーズ

潜在ニーズを満たす手段(ウォンツ例)

  • 業務のシステム化
  • 社員教育
  • 無駄な業務をなくす

まとめ

この記事では、潜在ニーズと顕在ニーズの違い、潜在ニーズを引き出す方法や潜在ニーズを引き出すためのポイントを解説しました。

質問を繰り返し行い、顧客がウォンツを求めるに至った背景を解明できれば、潜在ニーズを理解できるでしょうし、そのうえで本質的な解決策が提案できるようになれば、商談を有利に進めることができます。

慣れないうちは尋問のような質問で深掘りすることになる恐れがあるので、事前にどのような質問をするのかまとめておくとよいでしょう。

潜在ニーズを引き出すことはマーケティングの成功にもつながるので、ぜひこの記事を日々の業務にお役立てください。

最後までお読みいただきありがとうございました。