PDCAサイクルは時代遅れ?OODAやPDR、STPDなどの違いも紹介

マーケティングやマネジメントにおいて主流な手法となっているPDCAサイクルは現代では時代遅れといわれることがあります。そのため近年ではPDCAに代わる手法が使われることが徐々に増えています。
しかし、なぜPDCAサイクルは時代遅れといわれるようになったのかわからない方もいるでしょう。
そこで、この記事ではPDCAサイクルが時代遅れといわれる理由やそれに代わる手法である、OODA・PDR・STPD・DCAPについて詳しくご紹介します。PDCAとの違いもわかりますので、ぜひ参考にしてください。
執筆者

マーケティングサポート「バンソウ」のメディア管理人
株式会社クリエイティブバンクのマーケティングサポート「バンソウ」のメディア管理人。得意分野は、SEO全般・サイト分析・オウンドメディア・コンテンツマーケティング。バンソウはクライアント様のBtoBマーケティングをサポートするサービスです。詳しい内容はこちらをご覧ください。
PDCAサイクルが時代遅れといわれる理由
PDCA(PDCAサイクル)は1950年代にアメリカ合衆国の統計学者であるウィリアム・エドワーズ・デミング氏(William Edwards Deming)によって発表された考えで、業務改善や効率化に効果的な手法として注目されており、厚生労働省もPDCAが生産性を高めるためのひとつの手法として紹介しています。
現在は、企業だけでなく、研究所の円滑な運営を行う目的などで取り入れられています。
活用される機会が多いPDCAですが、なぜ古いといわれるようになったのでしょうか? 大きく理由を2つあげられるのでそれぞれお伝えします。
PDCAは時間がかかる
PDCAは、長期的に品質を管理して改善するための手法なので、業務改善を目的に医療業界や製造業界、IT業界など幅広い分野の企業に取り入れられています。
PDCAは4つのプロセス(Plan・Do・Check・Action)が1セットになっている手法で、取り組むべき内容が明確になるため、分析しやすく評価や検証を行う際に役立ちます。
しかし、計画を立てて実行する(PDCAサイクルを回す)となるとかなり時間がかかってしまいます。
近年は、これまでより流行やニーズの変動が激しく、計画を立てて実行するときにはすでに状況が変わっているということがしばしばあります。その場合、実行の先にある評価・検証ができないので改善まで進みません。
PDCAが古いとされる理由のひとつは、評価・検証まで時間がかかり、サイクル全体を回したとしてもプロセスをすべて行うことができない恐れがあることがあげられます。
長期的にじっくり業務改善を行う場合は効果を発揮しますが、短期的な成果を求める場合は不向きだといえます。
PDCAサイクルを回すことが目的となる
PDCAは、PDCA(Plan・Do・Check・Action)のフレームワークそのものが目的になりやすいです。
計画立案から実行するためのコストを確認したときに、結果とコストのバランスが取れていないと、計画を行うためにコストをかけることになります。
前述のとおり、PDCAは品質の管理・改善が目的の手法です。PDCAサイクルを回すことが目的ではありません。取り組んだときに、PDCAサイクルがうまく回せていない、サイクルを回すことが目的になっていると感じた場合は、目標と期間を明確にしましょう。
なぜPDCAを行うのかがはっきりすると、スムーズに課題を分析できます。
新しいアイデアが生まれにくい
PDCAサイクルは、すでに存在する(実行する)業務に対して改善を繰り返すものなので、新しいアイデアが生まれにくいとされています。
競合他社より魅力的な商品・サービスを生み出そうとしたとき、前例がない取り組みが必要になるとPDCAサイクルを回すだけでは新しいアイデアが生まれる可能性は低いといえます。
PDCAに代わるとされる手法
PDCA以外にも品質の管理・改善に用いることができる手法があります。PDCAに代わるとされている手法をそれぞれ紹介します。
OODAループ(ウーダ・ループ)
PDCAサイクルに代わり、問題解決に使える手法として注目されているOODAループ(ウーダ・ループ)。
もともとは問題解決の手法ではなく、空中戦で活用するパイロットのための戦術でしたが、現状分析から意思決定、そして行動に移すフレームワークは、目まぐるしく状況が変化する現代に合っているといえます。
PDCAとの違い
PDCAは「計画を立て、丁寧に実行から改善まで行う」ものでしたが、OODAは「現状を把握したら、とりあえず行動に移す」というものです。スピーディーに実行したい場合は向いている手法といえます。
OODAとは?それぞれのプロセスの意味
Observe(観察)
既存の市場や競合他社を観察・理解することで、今何が求められているのか考える段階です。Observeでは、柔軟性や臨機応変に考えられる思考が求められます。
Orient(状況判断・方針決定)
観察したことで得た情報の分析を行い、今の状況を把握して、方向性を決定します。スピーディーに進めることができれば、意思決定の速度が上がるためループを効率よく回せます。
Decide(意思決定)
観察して、どのような状況なのか把握して方向性が決まれば、具体的な実行計画が必要となります。どの方向に向かっているのか、効果的だと思われる方法はどれか選択して計画を立てましょう。
Action(行動・改善)
計画通りに実行する段階となりますが、一度意思決定した内容に固執する必要はありませんので、状況が変化したり、思ったような成功が見込めなかったりした場合は、はじめ(Observe:観察)に戻ってください。
OODAのメリット
スピーディーに実行できる
OODAのメリットとして一番にあげられるのが「スピーディーに実行できる」です。
現状判断を行えば、すぐに行動できるので、スピーディーにサイクルを回すことができます。PDCAと比べてもサイクルを回すスピードが速く、早い段階で目標達成できるといえます。
状況変化に対応しやすい
現状に合わせて方針を判断するので、計画を立ててから実行するわけではありません。
計画を実行している最中に状況が変わることは少なくありませんが、OODAの場合は、状況が変わったとしても素早く対応することが可能です。
ニーズに合わせやすい
現状を観察して方向性を決めるため、顧客ニーズに合わせた商品やサービスを提供しやすくなるといえます。
顧客ニーズは変化しやすいので、サイクルを回す際に、ニーズの変化に対応することが必要となりますが、OODAは変化に対応しやすいため、結果として顧客満足度を高めることにつながります。
OODAのデメリット
情報収集が不十分
OODAはスピーディーで変化に対して対応できるサイクルといえますが、スピード感が求められるがあまり、情報収集が十分にできないことや意思決定の判断が鈍くなることがデメリットとしてあげられます。
どの情報がどれくらい必要なのかを最初の時点で把握して、判断する場合は1人ではなく、計画に関わる複数人で話し合うことでデメリットを回避しやすくなります。
まとまりづらい
OODAサイクルは、個人が主導権を持ち、自由に考えて行動することを促しているため、組織としてまとまりづらくなり、組織内の目標もバラバラになる恐れがあります。
ほかの手法にもいえることですが、組織内の目的や情報は都度共有しましょう。
孤立しやすい
OODAは、個人に主導権があることがよい点としてあげられますが、責任が大きくなるため、1人で抱え込み、孤立してしまう恐れがあります。
1人ばかりが責任を抱え込まないように、組織内の全員で支え合いながらサイクルを回すとよいでしょう。
PDRサイクル
PDRサイクルとは「Prep(準備)、Do(実行)、Review(見直し・評価)の頭文字が取られたもので、PDCAなどと同様マネジメントサイクルの手法となります。
OODAループより実行段階が簡略化されている点とスピード感に特化している点がほかのマネジメントサイクルには見られない特徴としてあげられます。
PDRの意味
Prep(準備)
Prepでは、これから行うことを決定する段階となります。ここでは、プロジェクトの目的や理由を考えますが、具体的な数値を用いる必要はありません。あくまで目的が何か決まればよいです。
Do(実行)
Prepで考えた目的を達成するために具体的な行動をしますが、目的に対する理由に沿った行動かどうかを判断して、必要な行動を取るようにしましょう。
Review(見直し・評価)
実行した行動に対して見直し・評価を行います。この段階では、行動に対してどの部分でミスがあったのかをチェックすることがポイントです。次のサイクルで、できるだけミスをなくして、目的達成までスムーズに進めるようにします。
PDRのメリット
サイクルが短い
PDRサイクルは前述している手法と比較して段階がひとつ少なく、サイクルのスパンが短いという特徴があげられます。また、初めの段階で計画を立てるのではなく、準備から始めるので素早く回せます。
素早く改善できる
サイクルが短いので、行動に対して評価を行う期間を短くできます。また、サイクルを回す際に目標達成することが目的ではないので、「計画通りにできないかもしれない」といったプレッシャーなく、行動に移すことができます。
PDRの注意点
PDRサイクルを回す際は、Do(実行)の最中にReview(見直し・評価)を行ってしまうのですが、PDRのReviewは、行動を評価するものではなく、準備を評価するものです。この点を理解しておかないと、正しく評価できなくなる恐れがあるので注意が必要です。
STPDサイクル
STPDサイクルは、PDCAサイクルと同様のマネジメントサイクルの手法で、「See(見る)」「Think(考える)」「Plan(計画する)」、そして「Do(実行する)」の頭文字を取ったものです。
現状を見てどうするべきかを考え分析して、計画を立てて実行に移すというもので現状を認識するところから始めるマネジメントサイクルといえます。
STPDの意味
See(見る)
市場調査などを行い、商品・サービスに対する顧客や消費者の意見などをヒアリングして、現状を正しく把握します。
Seeに取り組む際は、先入観を捨てて、客観的な情報を収集することが重要です。
Think(考える)
See段階で集めた情報をもとに「現状に合わせてどう変えていく必要があるのか」を考えます。集めた情報から課題を出し、課題解決のために改善すべき点を考えます。
改善点を出す際には十分に時間をかけましょう。もし、課題を出すために情報が足りないと感じた場合は、再度Seeに戻って情報収集を行いましょう。
Plan(計画する)
Seeで得た情報からThinkで解決策を出し、Planでは計画に落とし込みます。
目標を明確化するために数値を用いると計画を実行しやすくなります。計画は5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)の要素を使用して立てるのがポイントです。
Do(実行する)
計画に沿って実行していきます。PDCAの場合は実行して、そこから改善を行いますが、STPDサイクルの場合は、実行前に準備をかける特徴があります。ですから、新しい取り組みを始めるときに役立つといえます。
STPDのメリット
リスク回避しやすい
初めの段階で現状把握や課題に対する改善案を出すために時間をかけるため、今までの顧客ニーズのほか、不満や市場の状況を正しく把握することができます。ですから、過去に起こった問題を回避して、計画を立てて実行することができるので、リスク回避がしやすく、その分計画を練り直す時間を短縮することでサイクルをスピーディーに回せます。
柔軟に対応できる
STPDでは、現状や事実を客観視して受け入れるため、想定していた結果とならなかった場合でも「なぜ、そうなったのか」、情報収集・分析してすぐに改善するといったように、臨機応変に対応することができます。
過去の経験や推測が割り込むことはないので、計画を立てる時間を短縮でき、実行するまでスムーズに進みます。
サイクルをスピーディーに回せる
STPDサイクルは素早く回すことができることが特徴としてあげられます。
初めのSeeとDoの段階を同時に行うことができるため、サイクルを回す時間がPDCAに比べると短くてすみます。
STPDのデメリット
評価することがない
STPDサイクルは計画前に時間をかけるため、必ず改善策という結果が出ると考えられており、評価段階が存在しません。
ですから、実行と現状把握を頻繁に行って計画改善につなげることが重要です。
実行するまでに時間がかかる
計画を立てるまでの段階(現状把握と課題に対する改善策)で時間をかける手法となるので、なるべく早く計画を立てる必要がある場合にはおすすめできません。
実行してから改善するという場合は、STPDよりPDCAが向いているといえます。
DCAPサイクル
DCAPは、OODAやSTPDと同じく注目されている手法で、「Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)、Plan(計画)」の頭文字を取ったものです。
内容は、PDCAと同じですが、順番が異なり、まずは行動しながら試行錯誤を繰り返し、最終的に計画を立てるというものです。
初めに実行することで、現状とニーズを判断して、その後によい行動をするための改善・計画を立てます。
OODAと同様に素早く実行に移すことができるのでニーズ変動などに対応しやすく、実行前に観察や状況判断、計画立案の段階を踏むことがないので、さらにスピーディーに進むといえます。
DCAPのメリット
実行までが素早い
実行する段階からサイクルが始まるので、実行する際の計画や意思決定に時間をかける必要がありません。変化しやすい現代社会に向いている手法として注目されています。
ニーズに合わせた計画立案ができる
実行した後に分析・改善を行うので、市場のニーズや競合他社の動きを把握してから計画を立てることが可能です。
リアルな市場や顧客ニーズに触れることで、今後どのように動くのか予想がつきやすく、成功につながる計画が立てやすいといえます。
次の行動に移りやすい
前述のとおり、計画を立てることなく実行に移すので、失敗のリスクは低いと言えます。もし、失敗したとしても、理由を分析して改善点を見つけることで、次の行動につなげることができます。
DCAPのデメリット
得られる成果が少ない
失敗した際のリスクは低いですが、その分何度もサイクルを回さなければ、それなりの成果を得ることができません。DCAPを用いる際はサイクルを回すスピードを気にするとよいでしょう。
大規模なプロジェクトには向かない
DCAPは、途中で計画を変更するとなると大きな費用が発生するような大規模プロジェクトには向いていないといえます。大規模プロジェクトの場合、実行する際のリスクが大きくなるため、PDCAサイクルを用いて、実行に移す前に細かく計画を立てるほうが向いているといえます。
目標・目的が定まらない
計画立案の段階を踏まずに実行するので、進むべき方向がわからずに進んでしまう恐れがあります。明確に目的・目標を立てる必要はありませんが、「売上を伸ばしたい」「企業や商品名の知名度を高めたい」など抽象的な目標・目的を持ってから始めることをおすすめします。
まとめ
この記事では、PDCAサイクルが時代遅れとされる理由や代替の手法としてOODA・PDR・STPD・DCAPの特徴やメリット、デメリットについてご紹介しました。PDCAサイクルには時間がかかることやサイクルを回すことが目的となる、新しいアイデアが生まれにくいなどのデメリットがあります。そのため、代替の手法としてご紹介した4つの手法から最適な方法を試してみるとよいでしょう。これにより、スピード感を持って業務を行うことが期待できます。