ターゲット層の決め方とは?集客に効果的なSTP分析を用いた方法をご紹介

現代の市場において商品やサービスを顧客に届けるためには、適切なターゲット層を決めることが非常に重要です。ターゲットを正確に定義することで、マーケティングの効率が大幅に向上し、顧客に商品やサービスが届きやすくなります。
しかし、ターゲット層はどのように決めるとよいのかわからない方もいるでしょう。そこで、この記事ではターゲット層の決め方について具体的に紹介します。メリットや重要性についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
執筆者

マーケティングサポート「バンソウ」のメディア管理人
株式会社クリエイティブバンクのマーケティングサポート「バンソウ」のメディア管理人。得意分野は、SEO全般・サイト分析・オウンドメディア・コンテンツマーケティング。バンソウはクライアント様のBtoBマーケティングをサポートするサービスです。詳しい内容はこちらをご覧ください。
ターゲット層を決めることが重要な理由
そもそもターゲットを決めることはなぜ重要なのでしょうか。ターゲット層を決めることは、集客やマーケティングにおいて大切です。ここでは、ターゲット層を決めることが重要な理由についてご紹介します。
ニーズに合ったマーケティング戦略を行うため
ターゲット層を決めないと誰に向けた商品・サービスなのかがあいまいになり、競合に埋もれてしまいます。また、多くの消費者に認知されたとしても、特定のニーズに応えられていないと「欲しい」と思わせることが難しくなります。そのため、狙うターゲット層を決めてそのニーズに合うようにマーケティング戦略を行うことが重要です。
マーケティング活動を効率化するため
商品やサービスが豊富にある現代では、幅広い層に認知してもらうことも有効ですが、ターゲットではない顧客層にもアプローチしてしまうと成約率が低くなるため非効率的です。そのため、ターゲット層を決めて商品やサービスの購入が見込める顧客層に対してマーケティングを行うことで成約率が向上し、効率的なマーケティングが可能になります。
ターゲット層を決めるメリット
集客やマーケティングにおいてターゲット層を決めることで、さまざまなメリットが得られます。ここでは、ターゲット層を決めるメリットについてご紹介します。
商品やサービスの差別化を図れる
ターゲット層を決めることは、ターゲットに対して自社の製品やサービスの存在を際立たせ、競合より一歩リードする戦略となります。ターゲットのニーズに合ったポイントを直接訴求できるため、顧客は自身の要望が反映された製品により引きつけられ、競合他社との明確な差別化が期待できるでしょう。
一貫性のあるマーケティングが可能になる
ターゲットが明確であると、社内の各部門がその方向性に沿って取り組むことができ、一貫性のあるマーケティング戦略を行えます。一貫した方針は顧客の信頼を築き、エンゲージメントの向上にも寄与します。また、一貫した方針の決定は内部の作業効率を高めるのにも役立ちます。具体的な方針があれば無駄な作業が減少し、組織全体の生産性向上につながるでしょう。
費用対効果を向上できる
ターゲットに焦点を当てたマーケティング施策を採用することで、無関係なターゲットに対する広告で余計な費用を費やさずにすみます。具体的には、特定の顧客層に特化した広告を展開することで、高い成約率を期待できます。
これにより、結果的に広範囲にわたる広告よりも多くの顧客を獲得できる可能性があります。明確なターゲット設定は、少ないリソースで大きな効果を見込める戦略といえるでしょう。
ターゲット層を決めるときに必要な知識
ここまででターゲット層を決める重要性やメリットをご紹介しましたが、ターゲット層を決める前に必要となる基本的な知識について改めて確認しておきましょう。
ターゲット層とは
ターゲット層とは自社の商品・サービスを販売する際の対象となる顧客層(ターゲット)のことです。ターゲット層は世代や関心度、意識レベルなどで分類できます。
ターゲット層の種類について詳しく知りたい方は「ターゲット層の種類とは?関心度や意識レベル、世代別の分類と特徴をご紹介」の記事をご覧ください。
また、ターゲット層を決めることを「ターゲティング」といいます。次にターゲティングについてご紹介します。ターゲティングとは
ターゲティングとは、市場に商品・サービスを売り出す際に、狙うべきターゲット層を決める作業のことです。商品を提案する前には、市場規模や成長の見込み、競合などを分析することが重要です。ターゲットを決める際に必要となるこれらの要素をもとに、最も効果的にアプローチできそうなターゲット層を決定します。
ターゲット層の決め方
ターゲットを決める際は必要な要素をそろえる必要がありますが、ターゲット層にはどのような要素があり、どうやって決めるのかわからない方もいるでしょう。そこで、ここではターゲット層の決め方について要素をあげてご紹介します。
ターゲット層を決める際の基礎的フレームワークで、欧米を中心にポピュラーな手法とされており、日本でも多くの企業に採用されているのが「STP分析」です。STP分析は、セグメンテーション(Segmentation)・ターゲティング(Targeting)・ポジショニング(Positioning)といった3ステップにより構成されており、それぞれの頭文字を取って、STP分析と呼ばれています。
次にこれらのステップについて見ていきましょう。
セグメンテーション
セグメンテーションとは、市場を構成する消費者を特定の基準で細分化する過程を指します。年齢や地域、心理といったさまざまな属性に基づいて消費者群を分け、それぞれに合わせたマーケティング戦略を展開します。セグメンテーションにはさまざまな切り口がありますが、一般消費者に対しては以下の特性に分類されます。
- 地理的変数
- 人口動態変数
- 心理的変数
- 行動変数
次に、これらの特性についてご紹介します。
地理的変数
地理的変数では、消費者が居住する地域をもとに市場を分析します。国や地方ごとに異なる気候、文化、生活習慣などが消費行動に影響を及ぼし、マーケティング戦略にも反映されます。この変数を用いることで、地域特有の需要を把握し、地域に根差したターゲティングが可能になります。
人口動態変数
人口動態変数には、年齢や性別、家庭構成、所得水準など、消費者の基本的な属性が含まれます。これらの情報は、消費者の購買力や商品に対する需要を理解するために重要です。例えば、年齢層や性別などが異なれば求める商品の種類も変わるので、マーケティング戦略もそれに応じて調整されます。
心理的変数
心理的変数とは、個人のライフスタイルや価値観、性格など内面的な要素を指します。消費者の購買行動はこれらの心理的要因に大きく影響されるため、これを把握することはマーケティングにおいて極めて重要です。消費者の内面を理解することで、よりユーザーに合わせたコミュニケーションが可能になります。
行動変数
行動変数は、消費者の具体的な購買行動や製品利用のパターンを捉えるための変数です。これには、購入履歴や製品に対する期待、忠誠度などが含まれます。消費者の行動パターンを分析することで、どの製品がどの消費者に適しているかを明確にし、効果的なマーケティング戦略を展開できます。
ターゲティング
ターゲティングでは、セグメンテーションで消費者を分類した後に、どの分類に対してマーケティングを行うのかを絞り込みます。市場規模や成長性、競合の状況などを考慮して適切なターゲットを選定します。ターゲティングで考慮すべき項目は「6R」と呼ばれ、以下があげられます。
- 有効な市場規模(Realistic scale)
- 競合状況(Rival)
- 成長性(Rate of Growth)
- 波及効果(Ripple Effect)
- 到達可能性(Reach)
- 測定可能性(Response)
有効な市場規模(Realistic scale)
有効な市場規模(Realistic scale)とは、製品やサービスを売り出す市場の全体的な大きさを表します。市場が大きいほど潜在的な顧客も多く、高い売上が見込める可能性があります。しかし、大きな市場は競争が激しいことも多く、必ずしも成功するわけではありません。
ニッチな市場に焦点を当て、特化した製品を提供することで、安定した売上を出している企業も多く存在します。市場の適切な規模を把握し、自社の製品や戦略に合わせて選ぶことが大切です。
競合状況(Rival)
競合状況(Rival)は、市場における競争の激しさを表します。ここでは、ブルーオーシャン(競争が少ない市場)かレッドオーシャン(競争が激しい市場)かを判断し、競合の商品やサービスを分析します。
ライバルが少ない市場は魅力的ですが、大手企業が存在する市場でも、地域やニッチな領域の顧客層を狙うことで成功の機会を見いだすことが可能です。競合の数だけでなく、差別化の可能性やほかの指標も考慮してターゲティングを行いましょう。
成長性(Rate of Growth)
成長性(Rate of Growth)とは、市場が将来にわたってどの程度拡大するかを示す指標です。対象市場の現在の売上や成長の潜在性を分析し、投資の価値があるかを評価します。市場規模が小さくても、高い成長率を示している市場は魅力的です。一方で、大きな市場でも成長性が乏しい場合は、戦略的なアプローチが求められます。
波及効果(Ripple Effect)
波及効果(Ripple Effect)とは、製品やサービスが購入された際に、その影響がどれだけ広範囲に及ぶかを表します。特にインフルエンサーの多い市場での活動は、その効果を最大化するための有効な手法です。
顧客が製品に対して高い関心を持っている市場では、その商品が購入されるとSNSを通じて情報が拡散されやすい傾向にあり、評判がよければさらに多くの購入を促せる可能性があります。逆に、顧客の影響力が低い市場では、このような波及効果を期待することは難しく、市場の消費者動向を詳細に分析することが重要となります。
到達可能性(Reach)
到達可能性(Reach)は、マーケティング活動が潜在顧客に届くかどうかを評価する指標です。地理的な障壁や通信手段の制約がある場合、顧客に届けるためにはより詳細なアプローチ方法を検討する必要があります。この指標に基づいて、効果的に顧客にアプローチできるマーケティング戦略を構築することが成功のポイントとなります。
測定可能性(Response)
測定可能性(Response)は、マーケティング活動の成果を具体的に測定できるかどうかを示す指標です。この測定を通じて、施策の効果を評価し、必要に応じて戦略を調整できます。具体的なデータに基づいてマーケティング活動を最適化し、PDCAサイクルを迅速に実行することで、効果的な結果を得ることが期待されます。
ポジショニング
ポジショニングは、市場における自社製品の優位な立ち位置を定義することです。これを実現するために、ポジショニングマップを用いて製品やサービスの特性をもとにした2つの軸を設定し、競合他社との違いを視覚的に捉えて自社の位置を決定します。これにより、自社が提供する価値と競合との差別化を明確にできます。
ポジショニングを決める際には、どのような軸で決定するかが重要になります。ここでは、ポジショニングの決定に役立つ軸についてご紹介します。
製品特性
製品特性では、価格や性能、品質などの製品特性を中心にマーケティング戦略を展開します。例として「性能が高い」や「使いやすい」「壊れにくい」といった属性があげられます。製品特性でポジショニングを行う場合は、自社製品の特性に対してターゲット市場が価値を感じるものに焦点を合わせることが重要です。
製品効果
製品効果では、消費者に提供する具体的な効果に注目し、それを通じて製品を位置づける方法です。このアプローチでは、製品がもたらす機能・情緒的・自己表現などの効果を明確にし、消費者にとっての製品価値を強調します。例えば、消臭剤なら「臭いが残らない」「デートでも安心」「できるビジネスパーソンが使う」など、製品が提供する効果をさまざまな方法で訴求することがポイントです。
製品の種類
市場内で製品の種類に基づいたポジショニングも可能です。ここでは、製品が属するカテゴリーを明確にし、例えば高級品や環境に配慮した製品など、特定のセグメントに合わせてポジショニングを行います。製品ごとに適したカテゴリーを選び、それに沿って市場内で独自の位置づけを確立することで、消費者の期待に応えつつ、競合との差別化を図ることが可能です。
製品の独自性
競合製品から差別化を図る戦略では、製品の独自性を前面に押し出し、市場内での独立したイメージを構築します。これにより、製品は既存のカテゴリーや競合から差別化でき、新たなニーズの創出や既存ニーズのより明確な価値提供を行えます。例えば、ほかの競合が機能性を追求し価格を上げる中で、特定の機能に特化しコストを抑えた製品を提供することもひとつの方法です。
使用機会
使用機会では、製品がどのようなシチュエーションや時間帯、対象者に最適かを考慮します。この方法では、製品が「朝と夜のどちらか」「若者層向けか、中年層向けか」「屋内と屋外のどちらか」など、特定の使用状況やライフスタイルに合わせることで、その製品がもたらす価値を顧客に明確に伝えます。
競合製品との関係性
競合製品との関係性に基づくポジショニングは、自社製品の独自性や競争上の優位性を際立たせることを目的とします。この戦略では、他社製品と比べてどの点が優れているかを明確にし、消費者にその差別化された価値を伝えることで、製品の魅力を高めます。具体的には「A社の価格と自社の価格」の比較を出すなどがあげられます。
ターゲット層を決める際の注意点
ここまでで、ターゲット層の決め方についてご紹介しましたが、ターゲット層を決める際には注意すべきポイントも存在します。ターゲット層を決める際の注意点についてご紹介します。
消費者全員をターゲットにしない
消費者全員をターゲットにする戦略は、実質的にターゲットを設定していないのと同じです。多くの商品やサービスが存在する現代市場では、消費者が自ら選択します。そのため、製品やサービスが具体的な特徴や利点を持っていなければ、消費者に選ばれることは難しくなります。すべての人向けにマーケティングを展開すると、膨大な広告費が発生し、購入につながる可能性も低くなります。効率的なマーケティングを行うためには、ターゲットを絞り込むことが大切です。
単純なセグメントだけで決めない
ターゲットを年齢と性別だけなどの単純なセグメントで決めることは、実際の消費者像と大きくずれることがあります。例えば「30代女性」と一言で言っても、その生活様式や価値観は人それぞれです。これらの違いは、製品やサービスがどのように受け入れられるかに大きな影響を与えます。そのため、単純なセグメントを分けるのではなく、前述したターゲティングの要素も取り入れて、より詳細なターゲット像を描くことが重要です。
まとめ
この記事では、ターゲット層の決め方について解説しました。適切にターゲット層を決めないと、ニーズに合っていない戦略や非効率なマーケティングを行うことになるでしょう。また、ターゲットを決めたとしても、消費者全員や単純なセグメントだけで設定すると、競合との差別化は難しくなります。
そのため、この記事でご紹介したターゲティングの要素を考慮して、より詳細なターゲットを決めましょう。適切にターゲットを絞り込み、そのニーズに合わせた商品・サービスとマーケティング戦略を展開することで、効果的な成果が期待できます。