情報セキュリティ対策の重要性と課題|企業が実施すべきセキュリティ対策とは
情報セキュリティの重要性は、急速に高まっています。現代の業務や生活において、情報通信技術(ICT)や情報の利用は不可欠な存在となっています。この連載では、情報セキュリティとICT技術について、専門知識が少なく馴染みが薄い方でも理解しやすいよう、基礎からわかりやすく解説していきます。
情報セキュリティとは
情報セキュリティは、企業の情報システムを守るための重要な取り組みです。これは、機密性、完全性、可用性という3つの要素を確保しながら、情報資産を安全に保ち、円滑に運用することを指します。
まず、機密性の確保とは、情報資産が権限のある人だけが利用できる状態を保つことです。情報漏えいや不正アクセスを防止するため、アクセス権の適切な設定や暗号化などの対策を取ります。
次に、完全性の確保とは、情報資産が正当な権限を持たない人によって改ざんされていないことを確かめることです。情報の改ざんや不正な変更を防止するため、適切なセキュリティ対策や変更の検出などを行います。
そして、可用性の確保とは、必要な時に情報資産を利用できる状態を維持することです。電源の確保やシステムの冗長化、データのバックアップや災害復旧計画などの対策を取ることで、システムの稼働を確保します。
情報セキュリティは、企業が貴重な情報を守るために欠かせない取り組みです。情報の流出や改ざん、システムの停止などの問題を防ぐことで、顧客や取引先からの信頼を維持し、ビジネスの継続性を確保することができます。
情報セキュリティのさまざまな脅威
情報セキュリティには、私たちの情報を守るために対抗しなければならないさまざまな脅威が存在します。ここでは、主要な脅威を4つ紹介します。
情報の盗難
悪意のある人が私たちの情報を不正に入手することです。個人のパソコンやスマートフォン、企業のウェブサイトなどが狙われます。例えば、簡単なパスワードを使うことやウイルス感染などが、情報を盗まれる一因となる場合があります。
情報の改ざん
ウェブサイトなどの情報が勝手に書き換えられることです。例えば、関係のない画像や不適切な文言、詐欺やウイルスへのリンクが追加されることがあります。これにより、サイトの信頼性や正確性が損なわれる可能性があります。
認証情報の不正使用によるなりすまし
不正な人が私たちの認証情報を使ってなりすましを行うことです。これにより、第三者が私たちになりすましてオンラインサービスにログインし、不正行為を行う可能性があります。大切な個人情報や企業の機密情報が漏えいするリスクがあります。
ネットワークの破壊・撹乱(サイバー攻撃)
インターネットを介して行われる意図的な攻撃です。サイバー攻撃は、個人から企業、政府まで様々な標的にされます。攻撃の目的は金銭的なものや経済的な損害を与えること、一般的な混乱や騒ぎを引き起こすことなどがあります。具体的な手法としては、DDoS攻撃や標的型攻撃、フィッシング詐欺などが挙げられます。
情報セキュリティ対策が必要な理由
これらの脅威に対処するためには、適切な対策が必要です。例えば、強力なパスワードの使用、ウイルス対策ソフトの導入、定期的なバックアップの実施、セキュリティ意識の向上などが挙げられます。
なぜ情報セキュリティ対策が必要なのでしょうか?その理由は、情報の価値が変わったからです。
近年、企業が扱う情報はますます重要な「情報資産」となりました。企業は大量の情報を収集し、それを経営やマーケティングに活用しています。情報は企業の競争力を高める重要な要素となっています。
一方で、個人情報保護法の施行や個人情報の厳重な保護策が導入されたことで、個人情報はより貴重なものとなりました。個人情報の保護が強化される中で、情報の希少性と価値が増しています。
このように情報の価値が高まると、情報を狙う悪意のある攻撃者も増えます。個人情報や企業の機密情報を盗み出したり、悪用したりするために、サイバー攻撃や内部不正が行われるのです。現代では、情報は常に狙われる対象となっており、企業は情報セキュリティ対策を必要とするのです。
情報セキュリティ対策は、企業の重要な情報を保護し、悪意のある攻撃から守るために欠かせません。
最初に企業が実施すべき情報セキュリティ対策
情報セキュリティ対策は、初めて取り組む企業にとってハードルが高いかもしれません。しかし、を押さえることで、セキュリティを強化することができます。以下に、情報セキュリティ5か条から抜粋した対策をご紹介します。
OSやソフトウェアの最新化
古いバージョンのOSやソフトウェアはセキュリティ上の問題を抱えていることがあります。常に最新のバージョンにアップデートしましょう。
ウイルス対策ソフトの導入
ウイルスやマルウェアからデバイスを守るために、ウイルス対策ソフトを導入しましょう。定期的なアップデートもお忘れなく。
パスワードの強化
パスワードは長く、複雑で使い回さないものを選びましょう。10文字以上の組み合わせや、個人情報を避けるようにしましょう。
共有設定の見直し
重要なデータの共有設定を確認し、必要な範囲内で共有しましょう。退職した従業員のアカウントも適切に処理しましょう。
脅威や手口の把握
標的型攻撃やフィッシングサイトなど、さまざまな攻撃手法について学びましょう。セキュリティの専門機関や企業の注意喚起情報を参考にしましょう。
これらの対策を実施することで、セキュリティのリスクを軽減することができます。ただし、全ての対策を一度に実施する必要はありません。リスクアセスメントを行い、優先順位をつけて対策を進めましょう。
情報セキュリティ対策には様々な製品や技術が存在しますが、一度にすべてを導入する必要はありません。企業のニーズや予算に合わせて、必要な対策を選択して導入しましょう。
継続的に企業が実施すべき情報セキュリティ対策
情報セキュリティ対策は一度行ったら終わりではありません。定期的な監査やアップデート、従業員への教育などが重要です。以下にそれぞれの対策について詳しく説明します。
OSやソフトウェアの最新化
古いバージョンのOSやソフトウェアには脆弱性が存在し、攻撃者に悪用される可能性があります。定期的なアップデートを行い、最新のセキュリティパッチを適用しましょう。
具体的な対策例:
WindowsやMac OSの自動更新機能を有効にする
ソフトウェアのベンダーのウェブサイトを確認し、最新バージョンを手動でダウンロード・インストールする
ウイルス対策ソフトの導入
ウイルス対策ソフトは、マルウェアやスパイウェアなどの悪意のあるプログラムからデバイスを保護するために重要です。信頼性の高いウイルス対策ソフトウェアを導入し、定期的なスキャンとアップデートを実施しましょう。
具体的な対策例:
ウイルス対策ソフトウェアを導入し、定期的なスキャンをスケジュールする
ウイルス定義データの更新を自動化する
パスワードの強化
強力なパスワードは、不正アクセスから情報を守るために重要です。パスワードの作成ルールに従い、長く複雑なパスワードを設定しましょう。また、パスワードの定期的な変更もお忘れなく。
具体的な対策例:
パスワードの長さを10文字以上に設定する
英数字や記号を組み合わせて複雑なパスワードを作成する
パスワード管理ツールを使用してパスワードを安全に管理する
共有設定の見直し
データの共有設定は慎重に行い、必要な範囲での共有に限定しましょう。また、退職した従業員のアカウントやアクセス権限の管理も重要です。
具体的な対策例:
クラウドストレージや共有フォルダのアクセス権を必要最小限に設定する
定期的に共有設定を確認し、不要なアクセス権を削除する
退職した従業員のアカウントとアクセス権限を適切に削除する
脅威や手口の把握
様々な脅威や攻撃手法について学び、それに対する対策を講じることが重要です。情報セキュリティの専門機関や業界団体からの情報を活用し、最新の脅威に対する知識を継続的に更新しましょう。
具体的な対策例:
IPAやOWASP Japanなどの情報セキュリティの専門機関のウェブサイトを参照する
セキュリティに関するニュースや注意喚起情報を定期的に確認する
従業員に対してセキュリティに関する教育・訓練を実施する
これらの対策を実施することで、企業の情報セキュリティを強化することができます。しかし、情報セキュリティは一度だけの取り組みではありません。定期的な監査やアップデート、従業員への教育などの継続的な取り組みが必要です。
大企業・中小企業のセキュリティ対策
現在、サイバー攻撃はますます巧妙化しており、大企業だけでなく中小企業も攻撃の標的にされる可能性があります。そのため、大企業・中小企業を問わず、セキュリティ対策が重要です。具体的な対策として、セキュリティソフトの導入や情報セキュリティ管理体制の構築が必要です。
セキュリティ対策を徹底的に見直したい場合は、経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」や情報処理推進機構(IPA)の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」が参考になります。
これらのガイドラインでは、情報セキュリティポリシーの策定方法や具体的な対策の実施方法が詳しく解説されています。以下に一部を抜粋し、まとめました。
- 自社の情報セキュリティの現状を把握する。
- 「基本方針の作成」や「現状の問題点」を改善する。
- 自社のリスクに応じた対策を検討し、対策予算を確保する。
- 構築した情報セキュリティ体制を継続的に運用する。
- 情報セキュリティ体制を定期的に見直し、改善する。
上記の対策を実施するためには、情報セキュリティに関する正しい知識や最新のサイバー攻撃事情を把握する必要があります。
情報セキュリティ対策は企業にとって不可欠な要素です。大企業・中小企業を問わず、適切な対策を講じて情報を守りましょう。
スマートフォンやタブレットのセキュリティ対策
スマートフォンやタブレットは、小さなパソコンとして機能しています。安心して利用するためには、パソコンと同じくセキュリティ対策が必要です。以下に、具体的な対策をご紹介します。
ウイルス対策アプリのインストール
スマートフォンやタブレットには、ウイルス対策アプリをインストールしましょう。これにより、不正なアプリやウイルスからデバイスを保護することができます。
OSとアプリの最新化
定期的にOS(操作システム)やアプリを最新のバージョンにアップデートしましょう。新しいバージョンにはセキュリティの改善が含まれており、既知の脆弱性を修正することができます。
公式ストアの利用
アプリをインストールする際は、公式のアプリストア(例:Google Play StoreやApp Store)からのみダウンロードしましょう。公式ストアでは、アプリの信頼性が確保されており、不正なアプリのリスクを減らすことができます。
紛失・盗難に備えた対策
スマートフォンやタブレットの紛失や盗難に備えて、以下の対策を実施しましょう。
- 端末をパスコードや指紋認証でロックする。
- 遠隔操作できるアプリをインストールし、データの消去や位置追跡が可能な状態にしておく。
LINEのセキュリティ対策
多くの人がスマートフォン用連絡ツールとしてLINEを使用しています。LINEアカウントの乗っ取り被害も報告されているため、以下のセキュリティ設定も忘れずに行いましょう。
情報の提供とアプリからの情報アクセスを制限する
LINEの設定で、他のアプリからの情報アクセスや個人情報の提供を制限しましょう。これにより、アカウントのセキュリティを強化することができます。
友だち追加設定を確認する
LINEの友だち追加設定を見直しましょう。自動追加や電話番号による友だち追加をオフにすることで、不正な友だち追加を防止することができます。
Letter Sealing設定をオンにする
LINEのトーク内容を暗号化する機能であるLetter Sealingをオンにしましょう。これにより、トーク内容の安全性を確保することができます。
ビジネスでLINEを使用する場合は、特にセキュリティ対策が重要です。自分のアカウントの設定を見直し、必要な対策を講じましょう。
ノートパソコンや持ち出しパソコンのセキュリティ対策
社用パソコンを社外に持ち出す場合は、置き忘れや盗難によるリスクが生じます。以下は、基本的なセキュリティ対策と共に実施すべき対策です。
セキュリティソフトの導入と定期的な更新
社用パソコンには信頼性の高いセキュリティソフトを導入しましょう。また、定期的な更新を行うことで最新の脅威に対応できます。
端末のロックとパスワード設定
社用パソコンには、パスワードや指紋認証などのロック機能を設定しましょう。これにより、他人のアクセスを防止できます。
持ち出し前の事前申請制度の導入
社外にパソコンを持ち出す場合は、事前に申請を義務付けましょう。使用者や目的、使用場所、日時などを記録することで、パソコンの厳格な管理が可能です。
データのクラウドストレージへの保存
重要なデータは、パソコンに保存せずにクラウドストレージに預けましょう。クラウドストレージを利用することで、紛失や盗難によるデータ流出のリスクを軽減することができます。
覗き見防止対策
カフェや公共の場所での作業時には、パソコン画面の覗き見を防ぐためにプライバシーフィルターを使用しましょう。これにより、視野角を制限し、情報の漏洩を防止することができます。
クラウドサービスのセキュリティ対策
クラウドサービスを利用する際には、そのセキュリティ対策にも注意が必要です。以下は、クラウドサービスのセキュリティを確保するためのポイントです。
通信の暗号化
クラウドサービスがデータの送受信時に暗号化通信を使用していることを確認しましょう。これにより、データの安全性を確保することができます。
データセンターの災害・侵入対策
クラウドサービスを提供するデータセンターが適切な災害対策や侵入対策を実施していることを確認しましょう。物理的なセキュリティ対策が適切に行われていることが重要です。
データのバックアップ体制
クラウドサービスがデータのバックアップを適切に行っていることを確認しましょう。データの損失を防ぐために、定期的なバックアップが行われていることが重要です。
ソフトウェアやOSの脆弱性対策
クラウドサービスが定期的なソフトウェアやOSのアップデートを行っていることを確認しましょう。脆弱性のあるバージョンが使用されていると、セキュリティリスクが高まる可能性があります。
不正アクセス防止策とアクセスログの管理
クラウドサービスが不正アクセスを防止するための対策を実施していることを確認しましょう。また、アクセスログの管理も重要です。正当なユーザーのアクセスが記録され、異常なアクティビティを検知することができます。
クラウドサービスを選ぶ際には、上記のポイントを継続的に実施している信頼性の高い事業者を選ぶことが重要です。
自分たちが持つ情報とそのリスクを適切に把握し、最適なセキュリティ対策を取るようにしましょう。そして、セキュリティ対策において重要な要素である「暗号化」を忘れずに実施しましょう。暗号化は、データや通信の安全性を確保するために不可欠な対策です。
以上が、スマートフォン・タブレット、LINE、ノートパソコン・持ち出しパソコン、クラウドサービスにおけるセキュリティ対策の概要です。これらの対策を実施することで、デバイスや情報のセキュリティを強化し、安心して利用することができます。
情報セキュリティ対策の課題や問題点
現在、情報セキュリティ対策の重要性は広く認識されていますが、それにもかかわらず、以下の3つの課題や問題点が存在します。
IT人材不足
情報セキュリティを徹底的に対策するには、専門的な知識を持った情報セキュリティ人材が必要です。しかし、中小企業を中心に、情報セキュリティ担当者が不足しているケースがあります。
企業が求める情報セキュリティの専門知識やスキルを持った人材を確保するためには、新たな担当者の採用や外部の専門家の協力を検討する必要があります。自社のニーズに合わせた情報セキュリティ人材を確保することが重要です。
困難なインシデント対応
サイバー攻撃やセキュリティインシデントが発生した際、適切かつ迅速に対応することは困難な課題です。インシデント対応の難易度は、日頃からのセキュリティ対策の徹底度に大きく影響されます。
定期的なセキュリティ対策の見直しやインシデント発生時の対応体制(CSIRT)の構築などを行うことで、インシデント対応能力を高めることができます。インシデントが発生する前から対策を考え、組織的な対応体制を整えることが重要です。
不十分な情報セキュリティ教育
情報セキュリティに関する意識や知識の不足は、企業のセキュリティ対策において重大な問題です。情報セキュリティ教育を行うことで、従業員の意識を高め、セキュリティポリシーの遵守や適切な行動を促すことができます。
情報セキュリティ教育は、社内での研修やセキュリティポリシーの周知などを通じて実施されるべきです。従業員がなぜ情報セキュリティ対策が重要であるかを理解し、日常業務においてセキュリティを意識することが求められます。
まとめ
情報セキュリティ対策は、企業にとってますます重要な要素となっています。しかし、情報セキュリティの課題や問題点も存在します。IT人材不足や困難なインシデント対応、不十分な情報セキュリティ教育などがその一部です。これらの課題に対処するためには、情報セキュリティ人材の確保、インシデント対応体制の構築、情報セキュリティ教育の充実が必要です。
以上の情報セキュリティ対策の課題や問題点を克服するために、企業は積極的な対策を講じる必要があります。情報セキュリティの重要性を再確認し、情報セキュリティに関する正しい知識や技術を持った専門家の雇用、定期的な対策の見直しや情報セキュリティ教育の徹底など、継続的な取り組みが求められます。
情報セキュリティ対策の重要性は企業にとって欠かせないものであり、これらの課題や問題点に真剣に取り組むことが重要です。適切な対策を講じることで、企業の財産や顧客情報などの重要な情報を守り、安定したビジネス活動を継続していくことができるでしょう。