プロポーザル方式とコンペ・入札の違いとは?プロポーザル方式の種類や特徴も紹介

ビジネスシーンで、「プロポーザル」「入札」「コンペ」それぞれの違いがわからないと感じたことはありませんか?
これらの違いがわからないと誤認識でトラブルが発生したり、混乱したりする恐れがあります。
この記事では、プロポーザル方式とコンペ・入札の違いやプロポーザル方式の概要と種類、特徴やメリットなどをわかりやすくご紹介します。また、プロポーザル方式の流れや注意点もご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
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マーケティングサポート「バンソウ」のメディア管理人
株式会社クリエイティブバンクのマーケティングサポート「バンソウ」のメディア管理人。得意分野は、SEO全般・サイト分析・オウンドメディア・コンテンツマーケティング。バンソウはクライアント様のBtoBマーケティングをサポートするサービスです。詳しい内容はこちらをご覧ください。
プロポーザル方式とは
プロポーザル方式とは、事業など業務を委託する際に、最も適している提案者(企業)を選定する方式のことで、商品やサービス、事業などの提案内容だけでなく、実施方針や実施体制など総合的に評価されて選定されます。
以下で解説している「入札」と異なる点として、プロポーザル方式は、提案という総合評価で発注先が選ばれることが特徴としてあげられます。
「提案者」を選ぶプロポーザル方式は、「提案」を選ぶコンペ方式と非常によく似ているので間違えることがあります。
プロポーザル方式で仕事を受注する場合は、「提案」だけでなく、「提案」する「提案者(企業)」が対象となるため、企業そのものが評価されることを理解しておくことが重要となります(コンペ方式については以下の項目で詳しく解説しています)。
発注側は発注先を、技術力や実績、事業実施体系などがまとめられた提案書から、客観的な評価に基づき選定するので、プロジェクトを進捗する際に、発注先とのミスマッチが起こりにくく、質が低い結果を提出されたり、納期が遅れたりするといったリスクを下げることができます。
提案側は、費用だけでなく、経験やスキル、実績を加味して総合的に評価されるので、過度な価格競争となる心配がなく、さらに仕事を委託されれば、一定以上の利益を確保することが望めます。
プロポーザル方式の主な評価項目
プロポーザル方式の主な評価項目には以下があげられます。
- 事業実施方針
- 事業実施体制
- 技術力・スキル
- 事業実績・経験
- 地域貢献度
プロポーザル方式の主な採用分野
プロポーザル方式の主な採用分野には以下があげられます。
- 建築設計
- デザイン
- マーケティング
- システムコンサルタント
- プロモーション
- 教育と研修
プロポーザル方式とコンペの違い
プロポーザル方式は、提案内容や技術力に優れている提案者(企業)を選定しますが、コンペは最も優れている提案内容を選択するための方式です。空間デザインや建築設計などの分野で運用されることが多いです。
プロポーザル方式では、評価項目で実績に重きがおかれていましたが、コンペ方式では提案力に優れていれば仕事を受注できることがあります。
自社に実績がない場合は、コンペ方式で実績を積み上げてからプロポーザル方式を採用しているプロジェクトに参加するのもよいといえます。
仕事の発注先を選定する前に、設計内容を発注側に提示するので、仕事を受注した後はスムーズに作業を進めることができますし、発注側も最適な提案を選択することができるので要望を反映させやすいというお互いにメリットがある方式だといえます。
プロポーザル方式と入札の違い
プロポーザル方式と入札では、選ぶ基準が異なります。プロポーザル方式では「提案」、入札では「価格」で選ばれます。価格で選ぶ入札の場合、発注側にとって最も有利な契約内容を選ぶことができるといえます。
価格に重きをおくので、工事などの工法や物品など規格が統一されているプロジェクトなど「価格」が定まっている場合の選定方式に「入札」が採用されることが多いです。
入札方式は3種類に分けることができるので、それぞれ解説します。
一般競争入札
一般競争入札は、国や自治体が定めた契約内容や入札資格を満たしていれば、どのような企業でも参加することができます。「無駄な税金を抑える」というコンセプトがあるので、最も安い提案金額を提示している企業が発注先として選定されます。
ただし、近年は納期の遅延や成果物の質が低下するリスクを下げるために、提案内容を含めたいくつかの評価項目を定めた総合評価落札方式を採用することが主流となっており、最低限の信頼性や納品物の品質が担保されているうえで、最も安い発注先を選定することができるといえます。
入札資格や契約内容が明確なので、一定の公平性と透明性が確保されており、プロポーザル方式と比べると実績が評価項目として重要ではない点がメリットとしてあげられます。
しかし、その分競合他社が多くなるため、質の高い提案内容を提示できなければ仕事を受注することは望めません。また、提案金額を重視されるため利益は必然的に少なくなるといえます。
指名競争入札
指名競争入札とは、国や地方自治体が独自の判断基準で企業を指名して、その中で発注側に最も有利な提案内容を提示した企業と契約する入札方式です。
発注側に有利な契約内容とは、一般競争入札と同様に価格重視の価格競争方式、もしくは総合評価落札方式に基いて発注先の企業が選ばれます。
発注側のプロジェクトの内容により判断基準は異なりますが、主に経営状態や社会的信用、実績などが評価項目にあげられます。
これまで、指名競争入札は頻繁に行われていましたが、官公庁と企業の癒着や談合が起きやすい問題があるため、近年は実施されることが少なくなりました。
また、物品の売買なども一般競争入札を行うよう会計法第29条に規定されているため、今後も指名競争入札が行われる可能性は低いといえます。
公募型競争入札
公募型競争入札には、「公募型指名競争入札」と「公募型随意契約」の2種類があります。
公募型指名競争入札
公募型指名競争入札は、入札資格を満たしている企業からの応募を発注側が審査して、入札に参加する企業を選びます。指名競争入札と比べると参加しやすく、一般競争入札より競合他社が少ないことが特徴としてあげられます。
公募型随意契約
公募型随意契約は、Webサイトで応募方法などが開示され、応募を集める入札方式です。この方式の対象となるのは、研究開発分野など特殊な技術や経験が必要となる限られた分野のみとなります。
募集したとしてもすでに随意契約を締結している企業が存在する場合が多く、ほかに特殊な技術やノウハウを持つ企業がいるかどうかを確認するために行われることが多いです。
プロポーザル方式の種類
国や地方自治体などの公共機関が実施しているプロポーザル方式には「公募型プロポーザル方式」と「環境配慮型プロポーザル方式」の2種類があります。
公募型プロポーザル方式
公募型プロポーザル方式は、1994年(平成6年)から一定以上の金額の事案に対して、地方自治体などが民間企業に業務を委託する際に採用している方式で、応募者の中から最もふさわしい民間事業者を選定するものです。
応募者は、地方公共団体が用意する仕様書(事業目的・事業実施場所・応募期間などの条件が記載)を期日までに提出する必要があります。
基本的には、提案書の内容とプレゼンテーションの質を定められたルールに基づいて評価され、発注先が選定することになりますが、指名型を採用した場合は、発注先と関係が深い提案者が選ばれる確率が高まります。
公募型プロポーザル方式を導入した際には以次の流れで発注先が決まります。
業務内容や参加資格などプロジェクト内容の概要がまとめられて、Webサイトで受注先を募集します。受注希望者は提案書を作成して提出します。あらかじめ提示されている評価基準で提案書を評価して、発注先が選定されます。
指名型のプロポーザル方式
指名型のプロポーザル方式が採用された場合は、発注先が事前に選定した発注先候補の企業の中から業務の委託先を決めます。
普段から取引があるなど何かしらの信頼関係が高い企業から選ぶことができるため、発注側は、発注後にトラブルが起きにくいメリットがあり、一方で提案側も普段から信頼関係が構築できている状態であれば、受注の可能性が高まりますし、競争相手が少ない状況で提案することができます。
裏を返せば、自社より発注先と関係性が強い企業がいる場合は、受注できる可能性がほとんどなくなります。
環境配慮型プロポーザル方式
国や独立行政法人などが大規模な改修工事(建築工事など)の設計業務を発注する際に実施される方式です。
応募者には、地球環境に配慮した内容の提案書の作成が求められるので、自然エネルギーを活用したり、温室効果ガスなどの排出量を削減するような技術的な提案を用意する必要があります。
2007年に「国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律」「国及び独立行政法人等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する基本方針」が定められたことで、環境配慮型プロポーザル方式が採用されました。
プロポーザル方式の特徴
プロポーザル方式の主な特徴をまとめて紹介します。
公平性・透明性・客観性を備えている採用方式
プロポーザル方式では、客観的な評価基準により公正な審査が実施されます。選定されるプロセスがはっきりしており、公平性・透明性・客観性を備えている提案者を選定することができるといえます。
客観的な視点に基づき、提案や企画の質を評価できるので、発注側は、優れたスキルや経験がある技術者やデザイナーに仕事を依頼でき、成果物にも期待できます。
また、提案側としてもどのような評価基準なのか明確になっているので、質の高い提案やプレゼンテーションを作成することに集中できます。
高品質な提案が可能
建築設計など、前もって内容や結果が見えるものでないものを設計費用のみで選定することは適切だといえません。プロポーザル方式を用いることで、結果の質を重要と考えて、プロジェクトに適しているスキルや知識、経験を持っている提案者を選定することができます。
提案内容ではなく、提案者を選定する方式
プロポーザル方式は提案書の「提案内容」ではなく、プロジェクトを委託する最適な人物(提案者)を選定することが特徴としてあげられます。一方、「提案内容」そのものを評価・検討される「コンペ方式」があります。コンペ方式については、後ほど詳しく解説します。
プロポーザル方式のメリット・デメリット
メリット
プロポーザル方式の主なメリットは以下となります。
時間・費用・労力などの負担を軽減可能
プロポーザル方式で提示する提案書では提案内容だけではなく、実施方針、設計体制、実績の照会、提案内容を実施する技術力などをまとめて作成することが中心となります。
プロポーザル方式を採用すれば、発注する側も提出する側も提案内容が把握しやすいので、負担を軽減して対応することができます。
発注者と提案者の共同事業
選定された提案者は発注者と共同で業務を進捗することになるので、良好な関係を築き、協力することがポイントとなります。スムーズにコミュニケーションが取れる環境を整え、業務スピードや納期の遅延リスクを下げることができます。
共同で作業を行うので、認識のずれが起こりづらく、疑問点があったとしても素早く解決することができるので、修正作業の手間も抑えることができます。
発注者の要望を反映しやすい
プロポーザル方式の場合、前述のとおり発注者と提案者が共同作業を行い、プロジェクトを進捗するので、発注者の要望を組み込み、反映しやすいといえます。
契約交渉の場では、発注側は受注側に対して提案内容を適宜変更することができます。しかし、強引に契約内容を変更すると仕事を引き受けてくれる企業がなくなる恐れがあるため注意が必要です。
直接契約内容を交渉することができるのは、受注側にとってもメリットといえますが、発注側が大幅に金額を下げてくる場合は仕事を受けないことをおすすめします。もし、受け入れてしまうと繰り返し値下げ交渉を要求される恐れがあるので気をつけましょう。
一定の利益を確保できる
価格で提案者を選定する入札方式と比較すると、プロポーザル方式は利益が大きくなります。発注者側は、提案内容の質を評価対象としているので、価格のみで選定されることはありません。
提案側は、プロジェクトを委託されるためにコストを最優先にした質が落ちてしまうような提案書を作成する必要がなく、競合他社と価格競争の心配もないので利益を拡大することができます。
デメリット
プロポーザル方式の主なデメリットは2つあります。
ある程度の実績(信頼関係)が必要
提案内容が競合他社より大きく優れていない場合は、発注側と提案側の信頼関係の高さで企業が選ばれる可能性が高まります。普段から取引をしている企業であれば、発注側の仕事の進め方や内部事情を把握しているので、提案内容や契約金額に対して柔軟に対応することができます。
一方、提案内容の質がよく、契約交渉の場に進めたとしても、契約交渉の場で契約金額や提案内容を大幅に変更することを迫られて、合意に至らないことがあります。
企業としては一定の利益を確保するためにプロポーザル方式のプロジェクトに参加するので、契約金額の値下げに対応してまで仕事を受注するかどうかは慎重に判断する必要があります。
運用に慣れず評価基準があいまい
プロポーザル方式の特徴である公平性や透明性は、発注先がしっかりと運用する体制が整っていることが前提となります。経験が乏しい場合は、評価基準を明確に定めることができないので、客観的視点で受注先を選定することができません。
評価基準があいまいで、提案内容や企業実績などが正しく評価されない場合は、参加することを見送ることをおすすめします。評価基準が明確に定まっていない場合は、実績やスキル、提案内容などより、発注先との信頼関係で受注先が決まることが多くなります。
プロポーザル方式の一連の流れ
公募型プロポーザル方式を例にどのようなプロセスで選考が進められるのかお伝えします。
公告
Webサイトでプロジェクト内容や提案書作成の際に使用する資料といった情報が開示されます。今後の取引につながる可能性はあるか、受注見込みはどれくらいなのかを判断して申し込むかを決めます。
説明会
プロジェクトに関して具体的な内容を説明するために説明会が開かれます。案件内容やニーズの把握を心がけて参加しましょう。プロジェクトの募集要項に説明会の参加を定めている場合があります。
エントリー
説明会で得た情報から参加するかどうかを決定します。自社より優れている企業が多数参加している場合は、受注する可能性が低くなるためエントリーしないという判断も必要です。
質問
仕様書に書かれている判断に迷う内容や疑問点について質問することができます。一般的に、質疑応答の内容は参加企業に開示されるので、質問することにより発注側に熱意を伝えることができる一方で、競合他社に情報を渡すことにもなるので、慎重に行動しましょう。
企画書や提案書の作成
求められる必要事項を記載した提案書・企画書を作成します。「プロポーザル実施要領」などに記載されているルールを守れていない提案書・企画書は無効となるので注意してください。
提出
指定された書類を提出します。期限ギリギリとなると記載漏れなどのトラブルが発生する恐れがあるので、余裕をもって提出することをおすすめします。
プレゼンテーション
選考によっては、提案書を提出するだけでなく、プレゼンテーションを行う必要がある場合もあります。プレゼンテーションを行う場合は、資料の制限やプロジェクターの仕様など定められた条件に合わせて準備する必要があります。
結果通知
結果に関しては、通常書面で通知されます。
分析
結果にかかわらず、選考過程を分析することで質の高い提案ができるようになるため、自社の対応や競合他社の分析、ニーズの理解などを振り返ることが重要です。
プロポーザル方式を採用しているプロジェクトに参加する際の注意点
評価基準が明確なプロジェクトに参加する
プロポーザル方式は、提案内容や企業実績などいくつもの評価項目で高い評価を得た企業を発注先として選定します。
前述のとおり、発注側がプロポーザル方式の運用に慣れていない場合は評価基準があいまいとなります。公平性や透明性が確保されていないと感じた場合は、参加しなくてもよいでしょう。参加したとしても、仕事を委託される可能性は低く、従業員の負担だけが増えることとなります。
さらに、発注側が過去の実績を重視した判断基準を明確にしている場合は、発注側が質の低い成果物を納品されるリスクを避けるため、初めて参加する企業や実績が少ない企業は落選する可能性が高まります。
評価基準が明確化されており、過去の実績だけで判断しないプロジェクトに参加することが仕事を受注する可能性を高めることにつながります。
誤認識をなくす
発注側が提示する開示要件や募集方法の内容はしっかりと把握しましょう。誤認識があれば修正に手間取るだけでなく、規定違反に該当してしまうと提案書自体が無効と判断されてしまいます。
仕事を受注するための時間を無駄にしないためにも、開示されている情報には必ず目を通し、不明点や疑問点がある場合は発注側に直接問い合わせましょう。
自社と競合他社の比較・分析
プロジェクトに参加する際には、申し込む前に競合他社の分析を行いましょう。もし、競合他社が自社より実績も技術力も優れている場合は選定される可能性が低いといえます。
競合他社の分析をおろそかにすると、仕事が受注に至らず、それまでの時間や手間が水の泡となります。受注する可能性がどれだけあるかを考えてから参加するかどうかの判断を下しましょう。
近年はコンペ方式寄りになっている
プロポーザル方式とコンペ方式では選定する際の評価項目が異なります(コンペ方式については以下で詳しく解説しています)が、近年、プロポーザル方式はコンペ方式に近くなってきています。
プロポーザル方式においてもプロジェクトに対してより具体的な提案書が求められる傾向が強くなってきており、準備や手間、費用などが増大しているといえます。受注できないと準備にかかった手間はすべて白紙の状態に戻ることになるので注意が必要です。
その一方で、プロポーザル方式では発注側と信頼関係が強い企業が受注する可能性が高かったですが、信頼関係だけでなく提案内容にも重きをおいて選定されることになるので、受注する可能性が高まる応募企業も増えるといえます。
まとめ
今回は、プロポーザル方式とコンペ・入札の違いやプロポーザル方式の概要と種類、特徴やメリット・デメリットなどをそれぞれわかりやすく解説しました。
プロポーザル・入札・コンペは混同しがちな言葉となりますが、プロポーザルと入札は選定基準が異なる(提案者と価格)、プロポーザルとコンペでは選定基準が異なる(提案者と提案)といった違いがあると覚えておきましょう。