DDoS攻撃とは?DoS攻撃との違いや種類、被害事例、対策方法を解説

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ウェブサイトやサーバーに対するサイバー攻撃の中でも、DoS攻撃・DDoS攻撃という手法が存在します。この攻撃は、多量の情報を送りつけることでウェブサイトのアクセスが困難になる、あるいはサーバーがダウンする事態を引き起こします。

本記事では、DoS攻撃・DDoS攻撃について分かりやすく解説します。さらに、これらの攻撃から守るための対策方法も紹介します。

DoS攻撃とは

DoS攻撃は、悪意を持った人がインターネット上のサーバやウェブサイトに大量のデータやリクエストを送りつけることで、サービスの提供を妨げる攻撃のことです。

例えば、混雑した道路に無数の車が同時に詰まってしまうようなイメージです。通常、ウェブサイトへのアクセスはスムーズに行われますが、DoS攻撃が行われると、サイトへのアクセスが困難になるか、まったくできなくなることがあります。

これは、攻撃者が大量の要求をサーバに送りつけるため、サーバが処理しきれなくなるからです。サーバは、同時に多くのアクセスを処理する能力には限りがあります。そのため、攻撃が集中すると、サーバがオーバーロード状態になり、正常なユーザーのアクセスを拒否してしまいます。

DoS攻撃の一種であるDDoS攻撃は、さらに洗練された形態です。多数のコンピュータやデバイス(ボットネットと呼ばれます)を使用して攻撃を行い、より大規模なトラフィックを生成します。これにより、サーバを完全にパンクさせることができます。

要するに、DoS攻撃やDDoS攻撃は、サーバやウェブサイトに過剰なトラフィックを送り込むことで、正常な利用者のアクセスを妨げる悪質な攻撃方法なのです。

DDoS攻撃とは?DoS攻撃との違い

DDoS攻撃は、DoS攻撃の進化版として知られています。DoS攻撃が「サービス拒否攻撃」という意味なのに対し、DDoS攻撃は「分散型サービス拒否攻撃」という意味です。これは、複数のコンピュータから同時に大量の攻撃が行われる攻撃方法です。

DoS攻撃では、1つのコンピュータから攻撃が行われますが、DDoS攻撃では、複数のコンピュータが攻撃に参加します。攻撃者は、不正に制御下に置いた複数のコンピュータを使用して攻撃を行います。これにより、攻撃の規模が拡大し、サービス提供を妨害する力が増します。

イメージとしては、DoS攻撃が1台のトラックで道路を塞いでしまうのに対し、DDoS攻撃は多数のトラックが同時に道路を塞いでしまう状況と言えます。

DDoS攻撃は、攻撃者が複数のコンピュータを利用するため、より大規模かつ複雑な攻撃となります。これにより、被害者のシステムやサービスは完全に混乱し、正常なユーザーのアクセスが不可能となる可能性があります。

要するに、DDoS攻撃は複数のコンピュータを使って同時攻撃を行う進化した攻撃手法であり、サービス提供を麻痺させることが特徴です。

DDoS攻撃はDoS攻撃より厄介な手法

DDoS攻撃は、DoS攻撃と比べてより困難な攻撃とされています。なぜなら、DDoS攻撃では複数のIPアドレスから同時に攻撃が行われるため、従来の対策方法が効果を発揮しにくいからです。以下にその理由を説明します。

攻撃元のIPが頻繁に変わるため、特定のIPをブロックすることが難しいです。
DDoS攻撃では、攻撃者が複数のコンピュータやボットネットを使用して攻撃を行います。そのため、攻撃元のIPアドレスは頻繁に変わります。このような攻撃では、単純に特定のIPをブロックするだけでは対処できません。

攻撃者は第三者のIPを利用するため、追跡や特定が難しいです。
DDoS攻撃では、攻撃者は自身のIPを直接使用せず、第三者のコンピュータやサーバを踏み台にして攻撃を行います。これにより、攻撃の源泉を特定することが難しくなります。攻撃者の正体を突き止めるのは非常に困難です。

このような特徴を持つDDoS攻撃に対しては、単純にアクセス回数を制限するだけでは対策が不十分です。より高度なセキュリティ対策が必要となります。

DDoS攻撃の目的

DDoS攻撃はなぜ行われるのでしょうか。考えられる理由は以下の5つです。

嫌がらせや悪戯

サイトの運営者が困ることを目的として、単純に他人を迷惑させるためにDDoS攻撃を行う人がいます。ただし、DDoS攻撃だけではデータの盗みや改ざんはできません。

妨害行為

競合サイトをアクセスしにくくするなど、営利目的での妨害行為としてDDoS攻撃を行う場合があります。ライバル企業による攻撃としても考えられます。

抗議活動

特定の組織に対する抗議の一環として、DDoS攻撃を行うことがあります。政治問題に対する抗議として、政府を標的に攻撃を行う事例もあります。

脅迫行為

特定の組織に対してDDoS攻撃を予告し、身代金の支払いを要求する脅迫行為があります。最近では、DDoS攻撃を示唆して仮想通貨での送金を要求する「DDoS脅迫」が見られます。

他のサイバー攻撃との併用

DDoS攻撃は単独で行われるだけでなく、他のサイバー攻撃と組み合わせて行われることもあります。DDoS攻撃を用いて攻撃対象者を混乱させ、その間に他の攻撃を行う戦術もあります。

これらの理由から、DDoS攻撃は様々な目的で行われる厄介な攻撃とされています。

DDoS攻撃の種類

DDoS攻撃には、複数の攻撃手法が存在します。以下にそれらの種類を説明します。

SYNフラッド攻撃、FINフラッド攻撃

攻撃者が接続元IPを偽装し、大量の接続要求(SYNパケット)や切断要求(FINパケット)を送信する攻撃です。これにより、システムに負荷がかかり、攻撃者はその隙を利用して不正なアクセスを行います。

ACKフラッド攻撃

大量のACKパケットを送信することで、接続の確立に必要なリソースを使い切らせる攻撃です。

UDPフラッド攻撃

偽装されたIPアドレスからUDPパケットを大量に送信し、サーバを攻撃する方法です。UDPはデータ受信を行うためのプロトコルです。

Slow HTTP DoS Attack

少ないパケット数で長時間にわたり、WebサーバのTCPセッションを占有することによって、通常のユーザーのアクセスを妨害する攻撃です。

DNSフラッド攻撃

1つまたは複数のDNSサーバに対して、大量のリクエストを送信することで、通常のユーザーの名前解決を妨害する攻撃です。

これらの攻撃手法は、異なる方法でサービス提供を妨害するため、被害者のサーバやネットワークに高負荷をかけることが特徴です。

DDos攻撃の被害事例

実際に起きたDDoS攻撃の被害事例を見てみましょう。

2016年のネットインフラ支援サービス企業への攻撃:
2016年には、インターネットの基盤サービスを提供する企業が大規模なDDoS攻撃を受けました。この攻撃により、世界中の有名なメディア、動画配信サービス、Webサービス、Webサイトで障害が発生しました。

マルウェア「Mirai」による史上最悪のDDoS攻撃:
2016年には、史上最悪の規模のDDoS攻撃がマルウェア「Mirai」を使って行われました。この攻撃では、一般的なパソコンやサーバではなく、IoT機器が攻撃の踏み台として利用されました。被害を受けた米国のDNSサービス提供企業は、数千万ものIPアドレスからの攻撃にさらされました。

これらの実際の事例は、DDoS攻撃がどれほど大規模で深刻な影響を及ぼす可能性があるかを示しています。攻撃者は、インターネット上の重要なサービスやシステムを狙い、その正常な機能を妨害するためにDDoS攻撃を行います。

DDoS攻撃の対策方法

DDoS攻撃に対処する方法について、以下に代表的な3つを紹介します。

同一IPからのアクセス制限

攻撃元のIPアドレスを特定し、そのIPからのアクセスを遮断する方法です。これにより、攻撃者のアクセスをブロックすることで、被害を軽減することができます。ただし、一つのIPからの攻撃に対処するだけであり、本格的なDDoS攻撃への対策にはなりません。

特定の国からのアクセス遮断

多くのDDoS攻撃は海外サーバを経由して行われるため、特定の国からのアクセスを遮断する方法も有効です。例えば、日本向けのサイトであれば、日本以外の国からのアクセスを制限することで攻撃を軽減できます。ただし、一般ユーザーや顧客からのアクセスも制限される可能性があるため、注意が必要です。

DDoS攻撃対策ツール(WAFなど)の導入

抜本的な対策として、DDoS攻撃に特化したツールやサービスを導入することが効果的です。例えば、WAF(Web Application Firewall)は、Webサイトやアプリケーションをサイバー攻撃から保護するツールです。WAFは通信やアクセスを監視し、不正なものを検知・遮断することができます。最近ではクラウド型のWAFも登場し、導入の難易度やコストも低くなっています。

CDNの利用

CDN(Contents Delivery Network)は、コンテンツをスムーズに配信するための仕組みです。CDNでは、世界中に配置されたキャッシュサーバーを利用することで、コンテンツの配信を高速化します。

CDNの利点は、アクセスが1つの場所に集中しないことです。複数のキャッシュサーバーを使用するため、アクセスの負荷を分散させることができます。これにより、DDoS攻撃が成功しにくくなります。

これらの対策方法は、DDoS攻撃への対処に有効な手段ですが、攻撃技術も進化しているため、継続的なモニタリングや最新のセキュリティ対策の導入が重要です。

まとめ